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2016.07
急激な酸化「燃焼」と、ゆるやかな酸化「さび」にまつわる話。
10年以上前の自分の車の話です。
そのとき僕はチェイサーに乗っていました。中古の。
ある日、僕は勤務先の駐車場についてふとタイヤ付近に目をやると、驚きの光景が目に飛び込んできました。
ホイール全面が、豪快に錆びついているのです。
もはや真っ茶っ茶。
「なんじゃこりゃ」
僕は新聞紙を持ってきて、ホイールをこすり汗だくになりながらサビを落としました。
そして一抹の「疑念」が頭をよぎりました。
まさか…
「酸化」の授業
その数日前。
授業(理科)は、「酸化」の単元でした。
僕は2種類の酸化について説明していました。
急速に進む酸化が「燃焼」
ゆっくり進む酸化は「さび」
自然にさびるのはかなり時間がかかる。
けど、燃焼ほどではないけどさびを早めることはできる。
食塩水を使うと鉄などは1日でものすごくさびる。
かいつまんでいうとこんな内容で、そのあとにホッカイロのしくみなどを説明する流れなのですが、そこに行く前についつい僕の悪いくせが出て少し話が脱線していきました。
むかつく奴に直接対峙せず、退治する方法。
あのな、むかつく奴がいるとするだろ?
でもそいつがけっこう力が強くてなかなか面と向かってもんくも言いにくい奴だったとするじゃん。
でもあまりにもむかつくから、何か精神的ダメージを与えてやりたい!
そんなあなたに朗報です。
バケツ一杯の塩水を用意!
そして、小雨でも降った日にどさくさにまぎれてそのむかつく奴の自転車にバシャーってかけてやれば、翌日そいつのチャリンコはさびだらけだ!
がっはっはー
まさか矛先が自分に・・・?
笑う生徒たちに、冗談だ、絶対にやるなと さんざん念を押したのですが、
まさか・・・。
僕の頭に浮かんだ疑念の対象は、生徒たちでした。
しかし、まさに「身から出たサビ」。
僕は生徒を責めるわけにはいかないことと、まさかいつも満面の笑顔で授業を受けている彼らの中に僕を「むかつく奴」として見ていた子がいたのかというショックで、われながら「今の自分の背中はきっと寂しそうなんだろうな」と思いつつ、背中を丸めてこびりついたサビを落としていました。
車から響く悲鳴
その翌日の出勤途中、僕は運転をしながら明らかな異変に気が付きました。
16万5000km以上走っていたのに、あまりメンテナンスをしなかったので、その頃、僕の車はブレーキを踏むと「キュルキュル」悲鳴を上げていました。
その悲鳴は日に日に激しさを増し、とうとう「濁点」をつけて叫ぶようになっていました。
ギュルギュルギュルギュルゴゴゴーン
それでもメンテナンス無精の僕は点検をお願いしませんでした。
今思うとそうとう愚かなチャレンジャーです。苦笑
しかし、その日の異音は車内にまで振動を感じるような嫌なものでした。
ブレーキパッド
さすがにブレーキがおかしいとなると、命にかかわる事故につながることにもなりかねないと思い、近所の行きつけのガソリンスタンドに寄ったとき、ついでに「すみません、ブレーキを踏むとすごい音がするんですけど、見てもらえますか?」と点検をお願いしました。
「おおっ、なんかすごいサビが出てますね」
ガソリンスタンドのお兄さんの声を聞いて、僕も車外に出て確認をしました。
前日、全面にこびりついていたサビは比較的きれいに落としたはずだったのに・・・
前日ほどではないものの、またもやサビが…
お兄さんは、ペンライトでホイールの中をのぞきこみ、何かを確認していました。
そして、「やっぱり」と一言いうと、僕のほうを向いてこう言いました。
「ブレーキパッドがありません。」
?!
衝撃的。
自転車で言うなら、タイヤの動き(車輪)を直接押さえてとめるブレーキのゴムの部分。
そのブレーキパッドが、ない?!
ポロリと落ちたのか?
摩耗しきってなくなってしまったのか?
おそらく後者でしょう。
いずれにしても、僕は車のタイヤを金属で止めていたことになります。
子どもたちよ、申し訳ない。
僕は修理をお願いし、その作業を待つ間、前日のことを考えていました。
愚かな僕は、かわいい生徒たちを疑っていました。
あの笑顔の裏に、こんな陰湿なことをしでかす心の持ち主がいるなんてと、疑心暗鬼にもなっていたました。
だが、ちがいました。
金属同士がぶつかり合って止まっていたとするなら、その摩擦は、きっと火花を放っていたことでしょう。
ゆっくりとした酸化(さび)は、食塩水をかければ早めることができる、なんて生易しいものではありませんでした。
僕の車のタイヤは火花を放ち、急速な酸化(燃焼)を行っていたのです。
子どもたちよ、疑ってすまない。
ほんとうに申し訳ない。
考えてみれば、金属ではないホイールカバーに食塩水をかけたところでそこにさびが付着するとは思えません。
内側から、はみ出すほどの火花による酸化物の飛散。そして付着。
子どもたちの屈託のない笑顔。
すべての納得がいきました。
メンテナンスの重要性
「…このまま乗り続けてたら、あぶなかったですかね?」
僕がたずねると、ガソリンスタンドのお兄さんは
「大惨事でした」
と少し微笑んで言いました。
それ以来、車のメンテナンスはまあまあちゃんとするようになりました。
車のメンテナンスをケチるって、命をケチるようなもんだなって思えました。苦笑
おわり
それではまた。
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