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2019.12
【わが子の中学受験体験記】愛知県女子最難関・南山中学校女子部合格への道Ⅰ「覚悟」
「ありがとー いってくるね。」
少し混雑が始まりかけた早朝の東岡崎駅に、岡崎では見慣れない制服を着た長女が駅構内へと吸い込まれて行きます。
長女は今年私立中学受験をしました。
壮絶な1年11か月の受験を乗り越え、今、南山中学女子部に通っています。
僕は帰宅するのが深夜や明け方になることが多く、長女は今も「速読と徹個」を受講しに週に数回カレッジに来ていますが、二人で会話をする時間は正直ほとんど持てません。
だから毎朝、欠かさず駅まで送迎をします。
そのわずか数分が僕にとってはわが子との大切なコミュニケーションの時間です。(*´з`)b
発想と行動が昔と変わってないなと自分でも思います。笑
長女が中学受験をしていることは、個人的に聞かれればお応えするくらいでしたし、塾生保護者の皆様に自分からお伝えするようなこともありませんでした。
南女(なんじょ・南山中学女子部の略称)は愛知県内女子最高峰の私立中学です。
見事合格を果たした子たち同様に、悔しくも不合格になった子たちにも壮絶な受験勉強を重ねてきた日々があったはずです。
そのことを無視して、合格したことの興奮冷めやらぬ喜びを書き綴ることは、わが子だからこそ時間を置くべきだと考えました。
しかしながら、一方で、僕はたくさんのお子さんを預かる塾の指導者として、わが子と家族が歩んだ私立中学受験がどんなものであったかをお伝えする義務があると思っていました。
多くの塾には「合格体験記」(中学受験塾では保護者が綴る体験記などがある塾もあります)があり、それはたくさんの後輩、保護者にあこがれや勇気を与え、大変参考になります。
何を隠そう僕自身も多くのことをそれらの体験記から学ばせていただきました。
首都圏や関西都市圏に比べて、愛知県、とくに岡崎市のある三河学区では私立中学受験はあまり盛んではありません。
しかし、このご時世です。
私立中学受験が主流ではないこの地域の保護者にも、お子さんの進学先として「私立中」というのも選択肢の一つに置かれている方は多いように感じています。
実際、小学ぜんけん模試の返却面談のときにも、何名もの保護者の方に、わが子の「受験のきっかけ」や「どれくらい勉強したか」「いつくらいから準備したか」などについて質問を受けました。
秋が過ぎ初冬を迎えました。
この時期は、私立中学を選択肢の一つに想定されている多くのご家庭で、中学受験をするかが検討されるピークの時期に来ているのではないかと思います。
少しでもそんな皆さんの参考にしていただければ幸いです。(‘ω’)ノ
それでは、たっぷりすぎる父親目線で、わが子の中学受験体験記を綴ります。
どうか温かい目でご覧ください。
【きっかけ】私立中学受験という選択肢
長女の名前は「和華」です。
「のどか」と読みます。
友達からは「のどちゃん」と呼ばれているようですが、僕は小さいころから「のかちゃん」と呼んでいます。
最近は人前で「のかちゃん」と呼ばないでほしいそうですが、僕には直接言ってこないので今でも「のかちゃん」です。(*´з`)w
小4も終わりに近づいた2月のある日、僕が仕事をしていると妻からLINEが送信されてきました。
そのころテレビではドラマ「下剋上受験」が放送されていました。
たしかに、このドラマの影響もあったかとは思いますが、直接的な出来事は小学校のお別れ音楽会であいさつをした卒業生代表の子が、滝中学に進学するという話を友達から聞いたことだったみたいです。
※小学校…和華は愛教大附属岡崎小学校に通っていました。
※滝中学…愛知県共学校の最難関私立中学です。
私立中学受験の話を僕たち親からのかちゃんにしたことはありませんでした。
だから、のかちゃんは、自分は附属小からそのまま附属中に進学するものだと思い込んでいました。( *´艸`)親もw
そんなのかちゃんにとって、学年は違えど同じ附属小の子で「私立」に進学する子がいるという情報は、衝撃を持って耳に入ったのかもしれません。
これがのかちゃんに「そういう選択肢もあるんだ」と思わせた出来事でした。
私立中学受験をすると決める前に必要な「覚悟」
僕は、のかちゃんが私立中学受験に興味を持ち始めたことについて、とても肯定的にとらえていました。
僕がこんな職業をしているのも、高い壁に向かって必死に努力して勉強することに一生モノの価値を感じているからです。
それは妻も同じでした。
しかし、ここは一歩引いて冷静にならなければいけません。
長女は、僕にとって文字通り一人目の子どもではありましたが、幸いにして僕は塾講師としてたくさんの親子の「選択」を見てきました。
だからこそ、決して軽いノリで始めてはいけないものだと知っていました。
その目標が高ければ高いほど中学受験には様々な「覚悟」が必要になります。
孤独を乗り越える覚悟。
同級生の大半が受験をするような地域ではないのです。周りの子たちが楽しく過ごしている時間も黙々と勉強しなければならないかもしれません。年の離れた妹だけを連れてお出かけに行くこともあるかもしれません。
やりたいことを犠牲にする覚悟。
のかちゃんは学校行事の実行委員や学級代表などに積極的に立候補する子でした。学年が進めばそうした学校や学級の仕事はがまんしなければなりません。それに、状況によっては受験に関係のない習い事はすべてやめなければならないかもしれません。
最後までやり遂げる覚悟。
難関私立中学の入試問題は通常の学校の勉強とは全く異なります。同じスポーツでも種目が違えば全く別の技術が必要なように、難関私立入試に挑むにはこれまでとは異次元の勉強をしなければいけません。
それでも思い通りにならないかもしれないということを受け入れる覚悟。
孤独に耐えて、いろんなことを犠牲にして、誰よりも努力したつもりでも、それでも時に入試は魔物のように牙をむきます。当日の精神状態、体調、ほんのわずかな心の隙間に魔物は入り込み、容赦なく襲いかかってきます。
——
「覚悟」が必要なのは本人だけではありません。
今年の流行語に乗っていえば、中学受験は家族が「ONE TEAM」でなければなりません。たとえば両親の受験に対する考え方(教育方針)が違うときっとどこかで歪みが生じます。
支える家族の覚悟。
のびのびと遊ばせてやりたい年代の子です。親にとっても子どもとたくさんの思い出を作っておきたい時期でしょう。
意図的に息抜きをさせることを除いては、それらの気持ちを抑えて時には鬼にならねばなりません。
すべてを子ども中心の生活にする覚悟。
起きる時間、食事の時間、寝る時間。生活のタイムスケジュールの多くは子どもの状況に合わせて動きます。塾の送り迎えや受験学年になれば月に何度も行われる会場テストに送り、テスト中の待ち時間には塾主催の私立中学説明会など様々な保護者会に参加します。
子どもの体調に本人よりも注意を払い、栄養に気をつけながらも、時には本人の好物をメニューの中心にしてストレス解消をさせてやることもあるでしょう。すべて子ども中心です。
高額な学費を払い続ける覚悟。
中学受験専門塾は一般の小中学生が通う塾と比べるとかなり高額な学費がかかります。(ビビります。)
もちろん、晴れて合格できた後もその後の私立中学に通う学費のことも考えなければなりません。本人の努力を金銭的な理由で中断させることがないように家計の収支を考え見通しを立てなければなりません。
父親としての覚悟。
今並べた「家族の覚悟」はどれが父親でどれが母親などと明確に区別するべきものでもないかもしれません。
家族ONE TEAMなのですから。
でも学費については、(当時から妻も仕事をしてくれていましたが)僕は自分が何とかしなければいけないと感じていました。それこそ、大げさではなく生きるか死ぬかの覚悟を要求させる問題でした。
僕は和華が小4になる年(小3の終わり)に脱サラ・起業してこの学習塾カレッジを開業しました。
何もかもが手探りで、手作りで、休日には娘二人いつも僕についてきてくれて、カレッジに届く机やイスを3人で組み立てては
「パパ、これだけあればいっぱいせいとが来てもだいじょうぶだね」
「うん、これが足りなくなるくらいたくさんの子が通ってくれるといいね」
「パパ、にんきでるね」
「うん、人気出るといいね」
なんて話していました。
しかし、そんな会話と子どもたちの笑顔を思い出すと涙がにじんでしまうほど、カレッジの1年目は生徒が集まりませんでした。
それでも僕には落ち込んでいる暇などありません。
ゆかりのない土地で起業して軌道に乗るまで2年かかるとどこかで耳にしましたが、2年も持ちこたえるほどの資金は残っていません。
1年で軌道に乗せるにはどうしたらいいかを考えました。
僕は単純に、人の2倍働こうと思いました。
普通の人が1日8時間働くなら、僕は16時間働こう。
2倍のペースで頑張れば、1年で結果が出る。
そんな単純な算数ではないことは分かっていましたが、僕に残された道はとにかくやることだけでした。
次女を幼稚園に送ったら、カレッジに出勤して授業が終わったらポスティングに出かけました。冬の夜なのに汗だくで、コンビニの駐輪場で上着を脱いで涼んでいた思い出があります。
お盆休みや正月休みには宅配のアルバイトをして生活費の足しにしました。
1月末にはとうとう資金ショート寸前になり、家賃やアルバイトの皆さんに支払うお金が足りず、実家の母に頭を下げて1か月分の運転資金を借りて支払っていました。
そんなタイミングでの、のかちゃんの中学受験の話でした。
でも僕に迷いはありませんでした。
深夜バイト、休日バイトをしてでものかちゃんの挑戦を支えてやろうと思いました。
しかし、深夜も休日もバイトをする必要はありませんでした。
カレッジが最高の塾であるということには一点の曇りもなく自信を持っていましたし、実際それはじわじわと浸透しつつあり、3月入塾の子たちで塾生が70名近くになることになったのです。
あとはこの塾の「最高」を維持、更新していくことが僕のするべきことでした。
受験生としての覚悟。
モチベーションを上げるために僕はよく受験生たちに志望校を見に行くことを勧めます。
のかちゃんから中学受験の話が出た次の休日、僕はのかちゃんと二人で滝中学に行きました。
学校から駅までの長い道のりを二人でテクテク歩きながら、たくさん話をしました。
中学受験の勉強は、これまでの勉強とは別次元のものだということ。
中途半端な覚悟では乗り越えられないものだということ。
いろんなものを犠牲にしていくことになるということ。
たくさんの犠牲を払って勉強しても必ずしも合格するとは限らないということ。
——それでも勉強には、死にものぐるいでやる価値があるということ。
「勉強は見える世界が大きく変わる。
たくさんのことを知り、いろんな角度からものを見たり考えたりできるようになる。
パパは、高校まで勉強怠けてたせいで大学受験のとき本当に苦労した。
1日15時間。本当に死ぬかと思うくらい勉強した。
でもパパは第一志望の大学には受からなかった。
悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。
でも、今振り返ってみて、あの必死に机にかじりついて問題集と格闘した日々が、無駄だったなんて思ったことは1ミリもない。
むしろ、今の自分があるのは、あの必死で頑張った受験があったからだと思ってる。
勉強がパパを変えてくれたって、本当に心から思ってる。
決してお金持ちってわけじゃないけど、パパは今、すごく幸せだよ。」
そんな話を、のかちゃんは無言で聞いていました。
そして、少しはにかみながらのかちゃんは言いました。
「すっごく頑張ったら、のかちゃんも幸せになれるかな?」
僕は、のかちゃんの手を強く握って「なれる!絶対なれるよ!」って大きな声で答えたのを覚えています。
こうしてのかちゃんは中学受験を決意しました。
つづく。
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