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2019.09
山口揚平著『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』きっかけをくれた本
夏期講習も終盤に差し掛かり、残すは中3の入試対策に腰をすえて・・・と思っていたある日、名古屋市緑区にある「あかつき塾」塾長の久暁子先生から一本のメッセージが届きました。
もし、好きな本のバトンリレーのバトンをお渡ししたらご迷惑でしょうか。
聞けば、関西圏から回ってきたちょっとしたお遊びらしく、全国の塾長さんたちが好きな本をいくつか紹介していくバトンリレーを行っているとのことでした。
もはや、どこのだれが「出発点」なのかも分からなくなっているそうですが、僕はそこになんとなく「夢」を抱きました。
だれが始めたか分からないちょっとしたお遊びが、気がついたら日本中に拡がり、いつしか日本を飛び越えて世界各国をそのバトンが回る。
150年後、それに興味を持った異国の少年が、この本のバトンリレーのルーツをたどり旅をすると、そこには日本への旅行中に生き別れになった曾祖父の人生を知る感動の結末が・・・!!!
みたいな。
という壮大な物語に発展する可能性を秘めた(笑)「本のバトンリレー」のバトンを受け取りましたので、3回に分けて、各1冊ずつ本を紹介させていただきたいと思います。
「そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか」(山口揚平著)
これは、まだ僕が独立する前の塾でサラリーマンをしていたときに読んだ本です。
タイトルが直球過ぎるので、たまたまそのときの社長に「最近どんな本読んでるの?」と聞かれて、書名を言えず「・・・・ビジネス書です」と答えた思い出があります。笑
僕にとって「はじまりの本」とも言える一冊です。
見ている景色の違いを知った夜。
今から6年くらい前でしょうか。
この頃の僕は、学生時代にしていた塾のアルバイトでお世話になった先輩や同期と久しぶりに会って食事をする機会があり、大きなショックを受けていた時期でした。
ビジネスの話になると、彼らの話していることにまったくついて行けないのです。
一流商社に入って世界を渡り歩く先輩たち、大手証券会社で桁違いの金額を扱う仕事をしている同期。
数年前まで同じ景色を見ていた彼らは、もう僕とはまったく違う景色を見ていると思えました。
彼らの話す日本語が分からないのです。
それは、身近にないビジネス用語という語彙力の問題だけではなく、話していることの次元やスケールの違いからくるものでした。
大学生のころと変わらず、ずっと小中学生を相手に塾の仕事をしていた僕と、大人相手の世界へ飛び出し、文字通り「世界」を渡り歩いて仕事をしている彼らとの違いなのでしょうか。
いえ、塾の仕事をしていても間違いなくすごい人はいます。(今となってはそれを思い込みではなく確信として感じます。)
僕は自分の勉強不足を恥じました。
「会社の方針」に揺れる
それからというもの、僕は自分にノルマを課してたくさんのビジネス書を読みあさりました。しかし、以前、下の記事で書いたように、本のノルマ化はあまり僕に向いている読み方ではありませんでした。
でも、たくさんのビジネス書の「つまみ食い」をいくつも頭にカチンコチンと響かせているうちに、自分の仕事に生かせることはないかと考えるようになりました。
「塾」をテーマにしたビジネス書は僕が読んだ中にはありませんでしたので、異業種のことばかりでしたが、異業種だからこそ融合させると化学反応を起こしておもしろいことになるのではないかと思えたのです。
しかし、会社組織のいち構成員である以上は、当然ながらある程度足並みをそろえていかなければなりません。
もう今となってはどんな議論をしていたのかも鮮明には覚えていませんが、本を読み、そして外に出て見聞きし得たものを会社に持ち込み、次々と提案することは、気づけば時に会社の方針に一致しないこともあったように思います。
会社の方針を決めるのは最終的には社長の仕事です。
・・・
そんな揺れ動く心を抱えていたとき、ふと立ち寄った書店の棚を見上げると大きな文字が飛び込んできました。
そろそろ会社辞めようかなと思っている人に・・・
揺れる僕の心に直接語りかけるようなそのタイトルに手が伸びたことは言うまでもありません。
「生きている」ことを実感するための土台となる考え方を教えてくれた本。
先ほど僕は、この本を「はじまりの本」と言いました。
今、僕はサラリーマン時代とは比較にならないほど休みも少なく長時間仕事をしています。それでたまに人から心配されたりカワイソウにみたいな言われ方をしますが、とんでもない。笑
僕はいま人生で最も楽しい時間を過ごし、「生きている」と心の底から感じることができているのです。
そりゃそうでしょ。
労働基準法にも働き方改革関連法にも縛られず、好きな時間に出社して好きな時間まで仕事ができる。たくさんの社外の人と自由に交流し、思い描いた「最良」を、自分でそのリスクと責任を負う覚悟を決めればどんどん実行していける。
そして、子どもたちが、保護者の皆さんが、喜んでくれる、感謝してくれる。
こんな幸せなことがあるでしょうか。
それができる「基礎」を教えてくれたのがこの本でした。
「何をやるか」ではなく、「どうやるか」です。
この本にはそうした心の持ち方だけではなく、仕事をする上でのさまざまな「工夫のヒント」がたくさん出てきます。
そのままカレッジで転用できるような工夫ではなく、発想の仕方を学ぶことができました。
うれしいことに、「西川先生はアイデア豊富ですね」などと言っていただくことがしばしばありますが、「何をやるか」ではなく、「どうやるか」ですという、本書のほぼ全編にわたって訴えかけるメッセージは僕の考え方の基礎になっていると思います。
最後に、本書の「はじめに」の一節を掲載させていただきます。
僕は、自分のように起業することを、皆さんにお勧めするわけではありません。
ただ、今の日本の閉塞感の中で、「生きている」ことを実感している人はどれほどいるでしょうか。その実感が持てないことで、とりあえず会社に通勤している人も、引きこもりをこじらせている人も、同じように苦しんでいる現実があります。
この解決策として、とにかく盲目的に社会のレールに乗るのではなく、まずは勇気を出して立ち止まり、自由を手にするべくあがいてみてほしいのです。
生きる意味がわからなくなったら、まずは自分が「好き」なことを追求してみてください。そして、自分が「好き」なことで社会に貢献し、そのお金で食べていくことができれば、そのときレールに乗った人生とはまったく違う、あなた個人の幸福が見つかると思います。
(同著「はじめに」より)
著者の山口揚平さんは、「好き」なことで「食う」生き方をするために必要なものは「勇気」と「知識」だと言っています。
勇気は学べないが、知識は学ぶことができる。
そんな知識を読者の皆さんとシェアしようではないか、というのがこちらの本です。