アニメの登場人物の「名付け」は、おそらく原作者の頭を悩ませる一つではないでしょうか。
有名な「配慮」がはたらいた名前に「ジャイ子」がいます。
剛田 武、つまりジャイアンの妹である「ジャイ子」は、原作者の藤子・F・不二雄が最後まで「本名」を明らかにしなかった登場人物です。
藤子・F・不二雄は生前、「友だちの女の子をジャイ子と呼ぶのはやめましょう」と語り、ジャイ子の本名を公表すると同じ名前の女の子が学校でいじめられるかもしれないと配慮して、意図的に本名を公開しなかったといわれています。
なるほどです。
子どもは時に残酷で、「相手の気持ち」には目もくれずに思ったままを口にします。
もしもジャイ子の本名が公開されていたとしたら、日本の各地で同名の子が「ジャイ子」とあだ名をつけられからかわれていたかもしれません。
僕は小学校のころは「キン肉マン」や「ドラゴンボール」が好きで、よく友だちの家に上がり込んでは、家の門限ぎりぎりまで読んでいました。
あれらの登場人物の名前は、現実の社会には存在しそうもないものがつけられていたように感じます。
今では名付けも多様化しているのでいるかもしれませんが…(*´з`)
一方で、学園ものやスポーツ系のアニメ漫画ではリアリティーを出すためか、実在しそうな名前が並ぶことが多いような気がします。
それにしても、意外と「西川」という名前の登場人物には出会うことがありません。笑
「六三四の剣」は僕の性格に大きく影響を与えた漫画でした。
僕は小1から剣道をやっていました。
当時、剣道をやってる少年少女の9割は読んでいた(と思われるw)バイブルがあります。
「六三四の剣」(村上もとか)です。
本当に何回読んだか分からないくらいくり返し何度も読みました。剣道に夢中だった小中学時代の僕を支えてくれた名作であったと今でも思っています。
勝利にこだわる六三四(むさし)を象徴するシーンがあります。
六三四のチームメイトたちが練習をサボってアイスクリームを食べていました。
そこに六三四が現れます。
六三四は静かに「オラ……オメたちとケンカしてえ!」と言って、防具もつけずに竹刀で打ち合うのです。
次々と仲間たちを打ちのめしていく六三四。
六三四は涙ながらにこう叫びます。
僕はこのときの六三四に自分を投影して、まるで自分の気持ち、自分の言葉としてこのシーンを繰り返し読んだ記憶があります。
六三四の考え方が僕と近かったのではなく、僕が六三四の考え方に近づいていったのかもしれないと思うほど大きく影響を受けた本でした。
僕が読んでいたのは24巻まである初期のものでしたが、今はコンパクトに10巻にまとめられて売っているみたいです。
お子さんが剣道をやっていてこの漫画を読ませていないなら、ぜひプレゼントしてあげてください。( *´艸`)1/2本気
少し話が脱線してしまいましたが、残念ながら「六三四の剣」の中にも「西川」は登場しませんでした。笑
累計単行本発行部数1億2000万部突破の大人気漫画に、ある日突然現れた「西川」
僕の読んできた漫画の中で、初めて登場した「西川」はこの人でした。
これだけ見て何の漫画のどの場面か当てることができたら、そうとうな漫画通ですね。笑
実は、この人の回想シーンに「西川」は登場します。
もうお気づきの方も多いかもしれませんね。
1996年に連載が終了しているにもかかわらず、今の中高生たちにも愛され読まれ続けているバスケ漫画「SLAM DUNK」(スラムダンク)です。
僕が待ち望んでいた「西川」の登場は、「スラムダンク」の30巻、山王戦という最高の舞台で、ある日突然やってきました。
それは、上のコマから始まるキャプテン「赤木」の回想シーンでした。
「赤木」が忘れ物を取りに教室に戻った時、隣の教室から聞こえてくる「声」を耳にするのです。
僕の人生初の漫画デビューは、「教室で部活サボってるやつ」でした。(T_T)
こんな不名誉な漫画初出演に、当時は原作者を逆恨みしたものです。笑
んー?文脈的に「西川」は「補習で遅れる」って言っているほうじゃないの?というのは言いっこなしです。
「教室でサボってるやつ」だけでも不名誉なのに、目の前で友だちが「赤木」に投げ飛ばされても
こんな顔して何も言えないやつが「西川」だったら、悲しすぎて立ち直れないです。(T_T)
だから、「西川」は「追試のほう」でいいのです。笑
スラムダンク「赤木」と「僕」の共通点
このスラムダンクの「赤木」にも、僕は自分を重ねてしまうところがありました。
僕は小中学時代はチームメイトにも恵まれ、そこそこに活躍をしたと自分を振り返れます。
しかし、高校ではこれといって部活が盛んなわけではない地元の高校に進学しました。
僕がこの剣道部を強くする。
そんな気持ちで必死に仲間を鼓舞し、練習に励みました。
けれど、僕が必死になればなるほど部員の数は、一人、また一人と減っていきました。
剣道の団体戦には、最低でも3人の選手が必要です。
でも、最終的には剣道部は僕を含めて2人しかおらず、剣道経験者に「試合の日だけでいいから来てくれないか」と同級生や後輩に頼み込んで何とか頭数を合わせて出場するようなありさまでした。
だから僕には、サボっている仲間たちに、「勝ちたくないのか!」と「どうして本気になれないんだ!」と憤る「赤木」の気持ちがとてもよく分かるのです。
お前と剣道やるの 息苦しいよ
サボっているだけでなく、全国制覇という夢をバカにされた赤木は烈火のごとく怒り、「西川」を投げ飛ばします。
投げ飛ばされたあと、「西川」は「赤木」にこう語るのです。
ここは神奈川県立湘北高校だぜ
とりたてて
何のとりえもない……
フツーの高校生が集まるところさ
…
強要するなよ
全国制覇なんて
激しい練習に耐え、勝利という目的を心から共有しあった仲間と流す汗や涙は、かけがえのない戦友として生涯にわたって深い絆を生んでくれる。
だからこそ、僕はこのときの「西川」の言葉を、おそらく「赤木」も感じていたであろう「どうして分かってくれないんだ…」という心理で受け止めていたと思います。
1学期の中間テストの際、中学部の生徒たちが書いた「覚悟の書」で「過去最高順位を更新できなかったら、家にある漫画を全巻西川先生に預けます」というのがあって、その後預かった漫画の中にスラムダンクがありました。
僕は、スラムダンクを見て、「懐かしいなあ、あっそうだ。人生で初めて漫画に登場した『西川』は教室で部活サボってるやつだったってネタになるな笑」と、「西川」の登場シーンを探しました。
そして、探し出した「西川」登場の場面。
二十年ぶりにこの場面を見て、僕は自分の受け止め方に変化があったことに気がつきました。
僕が剣道部を強くしようと勝利にこだわったことは、自分のエゴの強要であったのではないかと思えたのです。
強豪校と呼ばれる部活の顧問にありがちな、「価値観の押し付け」であり「強要」であったのではないかと。
ふつうに剣道を楽しみたかっただけの人
ほかに入りたい部活がなかったから入っただけの人
なんか見た目かっこいいなって思って入っただけの人
離れていった部員たちにそう言われているような気がしました。(/_;)
勝ちたい。
その一心で一生懸命になっることが、悪いことだったとは思っていません。
でも、高校時代の僕に欠けていたのは「多様性を認める心」だったように感じます。
いろんな人がいて、意見を交換して、互いを認め合い、ときにはぶつかり。
そんな中で、いつか心を一つにして汗を流すことができたら、いまいち勝てない弱小チームであっても、きっと卒業後も生涯にわたって続く永遠の絆が育めたような気がします。
すべての多様性を受け入れることは難しいけれど
いま僕は、学習塾を運営する立場として、そこには「受け入れられない多様性」が存在することを知っています。
例えば、まったく日本語を話せない異国から移住してきた子が入塾を希望したとします。
少人数制ながらも一斉授業を行っているカレッジでは、大変心苦しいのですが、その子の受け入れはできません。
どんな多様性にも対応できるだけの豊富な人材や財力があれば対応することも可能かもしれませんが、吹けば飛ぶような小さな個人塾であるカレッジが、生徒や保護者への責任を全うするためには、「あらゆる多様性を受け入れる」などということは不可能なのです。
たくさんの子どもたちをある方向に導いていくためには、個々の事情に「あえて耳をふさいで」対応していくこともありますし、実際に、極端な多様性を受け入れることが困難で、入塾をお断りしたり退塾していただいたりしたこともあります。
僕の説明が不十分であったため、その過程では暴言を浴びせられたこともありました。
ただ、高校時代の僕とちがうのは、たしかに「多様性を認めている」ことです。
さまざまな考え方の人がいる。
さまざまな性格の子がいる。
さまざまな環境、さまざまな境遇、さまざまな教育方針。
その「さまざま」を認めたうえで、その多くを受け入れ、どうしてもそれが難しい場合のみ「判断」しているのです。
子どもたちや親にも多様性があるように、塾にも多様性があります。
そうした中から家庭は、指導方針に共感でき、お子さんのタイプにより適した塾を選ぶことができます。
規模が大きくなると難しい場合もありますが、先生も選ぶことができます。
が、小中学校の場合、(特に公立だと)家庭は先生を選ぶことはできません。
指導者側の事情も理解できる部分はあるので、一概には言えない上に自分を棚に上げているようでちょっと歯がゆい気持ちになりますが、僕はこと「部活動」についてはもっともっと多様性を認めてもいいのではないかと思っています。
それについてはまたの機会に。
それではまた。
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