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2019.05
【全国学力調査ランキング】中3通塾率と4年後の大学進学率の関係
最近あまり話題にならなくなりましたが、全国学力調査って覚えていらっしゃいますか?
文部科学省が2007年度から実施している「全国学力・学習状況調査」のことです。
いちおう今も毎年続いています。
実施学年は小学6年生と中学3年生。
国語、算数(数学)、理科の3教科で、国語と算数(数学)は、A(知識)B(応用)に分かれています。
地域間競争の過熱をまねくとか、下位の都道府県に配慮とか、いろんな「ゆとり教育な理由」で全都道府県ランキング(1位~47位)がずらーと並んでいるものは、なかなか見あたりません。
ただ、それぞれの都道府県の正答率とかは詳細に公表されている(国立教育政策研究所)ので、そんな「ゆとり」を気にするゆとりがなかった僕は、かつて、これを集計してランキングにしたことがありました。
保護者会の話の題材にでもなればとこんなことをしていたのです。(*^-^*)
10年以上前の古い資料ですが、資料を見る上で致命的となるような大きな差異はなさそう(な気がする)ので、当時集計した資料をそのまま使わせてください。(-“-)ナマケモノ
「全国学力調査」平均正答数全国ランキング
まずは、平成20年度の中3「全国学力調査」平均正答数(95問中)のランキングです。
今でも毎年トップを取っている福井県や秋田県は10年前から上位だったんですね。
「全国学習状況調査」通塾率全国ランキング
また、「全国学力調査」と同時に行われている「学習状況調査」というものがあります。
これはアンケートみたいな質問がずらずら並んでいて回答していくものですが、その中に、こんな質問があります。
■ 学習塾(家庭教師含む)で勉強をしていますか。
回答は、
「1、 学習塾に通っていない」と、
通っている場合の
「2、 学校の内容より進んだ内容や、進んだ内容を勉強している」
「3、 学校の勉強でよく分からなかった内容を勉強している」
「4、 2・3の両方の内容を勉強している」
「5、 2・3の内容のどちらともいえない」
などの選択肢に分かれているのですが、塾や家庭教師での勉強内容はさておき、「通塾の有無」でいえば、「1」と「その他」で判断できるわけです。
そこから、同じ平成20年度の中3の子たちの「通塾率(家庭教師含む)ランキング」も作ってみました。
ちょっと注目していただきたいのが、「秋田県」と「山形県」です。
この2県は、秋田県(35.8%・45位)、山形県(35.3%・46位)と、通塾率がものすごく低いです。
ですが、教科テストである「全国学力調査」では、秋田県(2位)、山形県(7位)と極めて上位にいます。
この年がたまたまということではなく、数年ずっとこんな調子です。
すごいですね。
学習塾に通わなくても、学校の勉強だけでこれほどの成績がとれてしまうんです。
小学生部門でも、秋田県はずっと1位を取り続けているので、もはや学校教育界では「秋田県の学校教育は素晴らしい!」と絶賛の嵐だそうです。
大学等(現役)進学率 全国ランキング
さて。
実はこの資料を作成したのは平成24年度の夏のことでした。
なぜ、僕が平成20年度の古いデータを使ったのか。
そこには理由があります。
旺文社が、(例年だと)8月に全国の「大学等現役進学率」というのを発表します。
※「大学等」というのは「大学の学部、短大本科、大学短大の通信教育部、大学短大の別科、高等学校等の専攻科への現役進学」です。
平成20年に中学3年生だった彼、彼女たち。
平成24年には高校を卒業して、それぞれの進路を選びました。
「同じ子」たちの「その後」を見ることができるので、最初に平成20年の結果を使ったのです。
では、彼、彼女たちの4年後を見てみましょう。
むむ?
秋田県、、、
山形県、、、
どこいった?
視覚的に分かりやすくするために、ちょっと色分けしてみます。
赤は、中3のころの学力調査の全国上位ベスト10で、青は大学進学率の全国上位ベスト10、ともにベスト10に入っている都道府県(愛知だけですが)は緑です。
これによって、大学進学率上位の都道府県が、中学時代はどの位置にいたのかも分かります。
大学進学率と中学時代からの通塾率との相関関係
先ほどの「4年後」を見て何を感じられましたでしょうか。
もちろん、大学進学ランキングが正確に「学力」を示すものと必ずしもイコールにはならないことは留意しておかなければなりません。
そして、大都市圏を離れた地方では、そもそも大学等が少なく、家業を継ぐなど進学以外の道を選択する子が多くいることも決して見逃してはならない点です。
それを引いたとしても、これはどういう現象でしょうか。
秋田県にいたっては、「32」も順位が下がっています。
いや、そもそも上位(トップ10)をキープできているのは愛知県くらいで、それ以外は軒並み「落下傾向」にあります。
では、この「大学等進学率」と、先ほどの「通塾率」と並べてみます。
各都道府県の色を、通塾率の上位半分(緑)と下位半分(黄色)で分けて決めました。
それを大学等進学率のほうに反映させています。
これを衝撃の結果だと感じるのは僕だけでしょうか。
通塾率の低かった都道府県(黄色)は、軒並み大学等進学率も低いことが見て取れます。
「中学時代の通塾率の低い都道府県」=「大学等進学率の低い都道府県」
と言い切るには「そもそも地方は大都市に比べて塾の数が少ない」という見方もできる(ただ、人口も少ないので割合としては変わらないと見ることもできなくないか…)ので断言は難しいのですが、そういう強い印象を感じる結果が出てしまっています。
学校と塾では勉強の目的がちがう。
まるで「学校の勉強をちゃんとできていても塾に行かなければ大学には進学できませんよ?」と言われているようなこの結果は、いろいろ問題がありそうです。
学校教育の問題。
学校の授業を受けているだけでは受験に対応できる学力がつかないってこと?
入試の出題内容の問題。
学校の授業を受けているだけでは対応できない問題ってそもそもどうなの?
「いやいや、学校教育は受験のためにあるわけではありませんから。」
・・・はい。
僕もそう思います。
僕は以前、学校と塾とでは役割が異なることを書きました。
学校は勉強よりも集団生活などの社会性を学ぶことが主であってよいのではないかと。
学校教育法が定める目的・目標を抜粋すると以下のように書かれています。
「人間相互の関係について、正しい理解と協同、自主及び自律の精神を養う」
「郷土及び国家の現状と伝統について、正しい理解に導き、進んで国際協調の精神を養う」
「日常生活に必要な衣、食、住、産業、国語、数量的な関係、自然現象を観察・処理する能力を養う」
このように学校教育法には「受験」とか「入試」なんて文言は当然ですが一言も出てきません。
雰囲気的にはなんか崇高な感じがしますね。(^_^;)
でも、正直言って「現場」は中途半端な印象が否めないです。
くどいですが学校で勉強する目的はテストで高得点を取るためのものではありません。
でもテストで高得点を取るための勉強をしないと入試はきびしい結果が待ち構えています。
そんなわけで、後者の役割を塾が担うことになっているわけですが、通塾率が100%でない以上、学校もその「塾」的要素を担わなければいけないような状況です。
それが先ほどの「中途半端さ」を生んでいる原因のように思えてなりません。
競争や序列からは避けて生きていけないのが社会。
ゆとり教育が盛りのころ、競争の過熱を防ぐために、業者模試を廃止したり、他の学校には成績データを非公開とするようになりました。
その結果、全体の中で自分が相対的にどれくらいの学力があるのか判断できず、適切な受験校選びが難航する事態になりました。
通知表も相対評価から絶対評価に変わりました。
学力よりも授業中の態度や提出物の状況が評価されるようになり、頑張って勉強して良い点取ってもそれは評価されない…。すべてとは言いませんが、一部の子どもたちは頑張ることに無意味感を持つようになりました。
また、保護者からの追及を避けたい先生、生徒から嫌われたくない先生が、「1」をつけず「4」や「5」を乱発したため、通知表はインフレ状態になり、その価値を失ってしまいました。
小学校の通知表など「無意味」と言っても過言ではないほど高評価が乱発し、安心しきった保護者が中学に入学して最初の中間テストで学年順位を見て大慌て…というのも見慣れた光景になってしまっています。
競争や序列というのはそんなに忌避すべきものなのでしょうか。
競争や序列からは避けては生きていけないのが社会です。
入試、卒業試験、資格試験など様々な「試験」によって大人も含めた国民の学力が支えられているのも現実です。
勉強には価値がある。だから勉強するきっかけは多少無理やりであってもいい。
僕は「勉強する」ことに大きな価値と意味を感じています。
でも、僕自身がそう感じるようになったのも「結果論」であって、必死に勉強している真っ最中には気づいていなかったような気がします。
子どもたちに勉強する意味を納得させてから取り組ませることができたら素晴らしいことですが、なかなかそううまくはいきません。
事実、入試や学校でのテストがあるぞと言われて仕方がなく動き出す子がほとんどだと思います。
順位が成績に反映されるから勉強する。
成績が入試の合否を分けるから勉強する。
なんかキレイなストーリーではないですね。苦笑
でも、それで勉強し始めてくれるなら、無理やりにでも「受験」があってよいのではないかと思うのです。
無理やりからのスタートではあったけど、必死になって、目標に向かって一生懸命勉強する。
結果として、それがその子にもたらす未来は、やはり明るい場合が多いのではないでしょうか。
事実、僕は受験勉強を通じて人生が変わりましたし、真剣に入試に立ち向かうことによって人生を切り開いていった生徒たちをたくさん見てきました。
受験に合格するために勉強していたつもりが、それが自分の人生を充実させるための勉強だったと気づくのに、そう時間はかからないのではないかと思います。
学力テスト順位の低い大都市圏が進学率では上位を独占する最大の要因。
話を戻します。
通塾率の低い都道府県が、学力テストで上位に入り、学力テスト順位が低かった、いわゆる大都市を抱える都道府県が進学率では上位を独占する最大の要因。
それは、「私立」の存在だと思っています。
この全国学力調査は、「全国」と謳ってはいるものの、私立学校は任意の参加とされており、ほとんど参加していないのです。
※全受検者中私立校に通う児童生徒数の割合(平成30年度):小学生 1.2%・中学生 7.2%
大都市圏には、多くの私立があります。(もちろんレベルも上下幅広いですが。)
特に首都圏関西圏では、公立の教育に不安を感じ、早くから私立への進学を準備するご家庭が多い傾向にあります。
当然、そこに入るには入試があるので、幼いころから塾に通って必死に勉強しています。
この全国学力テストは、その子たちが受けていないのです。
逆に、田舎(と言っては失礼ですが)では私立志向もさほど高くなければ、私立の学校自体もあまりないので、ほとんどの子が公立の学校へ進学します。
つまり、大都市圏では中学入試で学力を高める訓練を行った子が受けない、いわば「ツワモノ温存状態」で、
田舎ではツワモノも含めた「総力戦」で受ける。
これが平均値の差になっているとは考えられないでしょうか。
実際、私立に通う子を含めて多くの進学志向がある子が受ける四谷大塚の「全国統一小学生テスト」の成績上位3000番までに入った子を都道府県別に集計すると、ほとんど「大学等進学率」の上位と一致してしまいます。
「全国学力調査」の実施そのものへの提言
毎年50億円近い費用をかけて行う全国学力調査です・・・。
さまざまな教育の現場に生かされているようですので無駄とは言いませんが、どうせやるなら「私立を含めた全小中学校」を対象に行うべきだと思います。
そうなれば当然費用がかなり大きくなりますし、毎年行う必要性もあまり感じませんので4年~5年に1回くらいでいかがでしょうか。(^_^;)
数年に1回になる分、浮いた予算を他の教育改革に充当させた方がいいことがあるのではないでしょうか。
少人数制クラスを全国で完全導入する費用とか、教員やサポート職員数増加の人件費、それに、大阪市が実施しているような「塾代助成事業」を国が実施するなどです。
※塾代助成事業…子育て世代の経済的負担を軽減するために、上限を1万円として指定の塾などのクーポンを交付。
教育に関する良いお金の使い道はいくらでも他にあると思います。
次回は、全国学力調査ランキング1位、2位の常連である「秋田県」「福井県」について“教科書が教えないリアル”を書いてみたいと思います。
それではまた。
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